もろもろ

連載記事

グローバル時代の生き残り戦略

弊社社長 シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。

33) 企業リスクマネジメント 第23話~がんばれ創業家一族~

 三洋電機の野中ともよ氏が会長兼CEOを辞任した。辞任理由として、同社の不適切な会計処理について内部調査を行う第三者委員会の設置を提案したが、否決、されたからだと報道されている。また、一方では夫の会社との数億円規模のコンサルティング契約や、インド出張に夫を同行させ、公私混同の資金使用があったと批判されている。同じコンサルティング契約が、他社とのものであれば問題にはならないのに夫の会社であったというだけで、利益相反したと見られてしまう。私の知っている多くの社長も、出張や行事に奥さんを同伴させ相当分を会社経費にしているが、あまり問題にはなってない。なぜならば夫婦同伴による晩餐出席は、いわば社長の仕事でもあるからである。家族が経営している会社と取り引きすることがいけないのではない。しかし、内容と程度によっては利益相反と問われがちなのは否定できない。野中氏は2002年に社外取締役に就任し、その後05年に最高経営責任者に就いている。この人事は創業家の井植敏雄前会長の肝入りであり、創業家の影響力排除を狙う金融機関出身取締役との激しい対立があったようである。野中氏は実は”お飾り”扱いされていたそうで、経営上の実権は何も与えられておらず、同社側から辞任してくれて嬉しいと思われているようだ。事実上の経営トップは同社メーンバンク出身の副社長であるらしいが、ではなぜ、経営再建にさほど貢献しなかった彼女を解任しなかったのか。それは、創業者井植ジュニア(井植敏雄氏) の社長就任とワンパッケージ人事であったからであり、野中氏に経営責任を負わせれば社長の敏雄氏にも跳ね返ってくるからと推察される。メーンバンクは創業家井植敏雄氏を守るという基本方針を持っていたので、野中氏の会長留任を認めざるを得なかったと当幹部はコメントしている。ならば、メーンバンクが創業家一族の排除を狙っているというマスコミ報道はまったくの誤報なのか。創業者は野中氏を会長に任命し、メーンバンクは創業家ジュニア社長を守り、金融機関出身役員がそれを排除しようとしている構図のようである。

 野中氏の辞任により、今後同社はどのように変革していくのか、是非注意深く見守っていきたい。不二家といい、同社といい、とかく最近の事例で創業家は悪く言われ叩かれている。実際にファミリー経営で公私混同になってしまっているところもあれば、外部資本や外部役員を積極的に取り入れて、健全経営を行ってきいるところも当然ある。しかし”創業家一族会社”の一言で、あたかも不健全であると一般にミスリードさせ、どの創業者会社もそうであろうと印象づけるような報道が多いので、創業者の私としては悲しいやら侮しいやら、なんとも切ない思いである。

 そういった風潮を盾に、創業者排除が正しい経営と誤解される。会社は誰かが創業して初めて会社になり、その創業時代の立ち上げの苦労は創業者でなければわからない。創業時代は人を雇う余裕がないので、一家で働いて助け合う。ある程度の中小企業でも、奥さんが経理担当という会社が少なくない。また2 代目には2 代目なりの維持継続、発展の苦労があり、そこには既にファミリー経営を脱却した組織における舵取りが待っている。そうやって、創業一族にかかわらず次の経営者に引き継がれていくのが会社であり、株主や社員及びその家族の生活をかけ、日々奮闘しているのである。

 松下電器産業の松下幸之助氏、堀場製作所の堀場雅夫氏、他にも沢山のファミリー創業者が多大な成功を収めている。創業者は会社を食い物にはしない。なぜならその会社に人生かけて借金を背負い、自分の収入より従業員の給料を優先する気持ちがあるからだ。創業者でないトップの不祥事のほうが絶対的に多いことはあえて言及したい。 創業者だろうが、雇われ社長であろうが、儲かったときの金を社会貢献に使う夢がない経営者は、いずれ政治と金の亡者と化して、真の達成感や豊かさを見失っていくだろう。

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