31) 企業リスクマネジメント 第21話 ~生き残るために、正直な経営~
月日の経つのは早いもので、あっという間に06年も終わりである。今年は企業倫理や安全対策を問うニュースが多かったように思う。去年の今頃を振り返ると、未だに記憶に新しい耐震強度偽造事件があった。建設会社やデベロッパーのパワーハラスメントを受け、一級建築士が耐震強度計算を偽り、その偽造計算にのっとり建築物が建ち販売されていたという恐ろしい話である。当時は国土交通省の他、黒幕コンサルタント会社や第三者検査機関、政治家の名も浮上し、設計から販売まで関わる全ての関係者の責任が追及された。しかし1年経った今、「姉歯問題」という風に事件名が簡略化されていても、人々は何の話しか理解することができる。社会問題であったはずが、設計したただ一人の個人犯罪のようなイメージを与える呼称になり、「姉歯」一人が汚名を残したまま年月が過ぎ去っている。
他の悪人はどこに消えてしまったのだろうか?先日テレビで゛揺れる家″についてのドキュメンタリーが放映されていた。3000万戸の新築一戸建てがちょっとした振動で揺れる欠陥住宅の話で、それは2階のおしゃれなバルコニーの床が簀の子で出来ており、建築基準上、床として見なされない、簀の子分の床面積が足りないことにより起こる揺れ現象であった。怒った住人は建築販売会社に欠陥を訴えるが、検査機関の検査をパスしているから仕方ないといった態度であった。ちょうど1年前に耐震強度偽造で賑わっている最中の物件購入であったので、逆に安心していたと住人は言うが、事件は全く活かされておらず1年たった今でも何も変わっていないことがうかがえる。あれだけ社会は騒いだが、再発防止の具体的措置について、私はあまり記憶がない。コストを抑えるために柱を減らさない商取り引きを継続しないといった脅迫的圧力をかけ、違法行為を下請けにさせていたことはまさにパワーハラスメントといわれる゛いじめ″であり、それは断じて撲滅されなければならない。例えば、国は力で違法をさせる行為に対して明白なペナルティを与え、下請け保護対策をとるなど具体的措置を講じて欲しい。
また、今年の初頭に市場から姿を消したライブドアの証券取引法違反事件も記憶に新しい。これは法の抜け穴をついて、株価操作をした一人のスマートな実業家堀江氏による経済犯罪であった。10年前には資本金600万円であった会社が、利益100億円の会社へと急成長したかのようであったが、あとで水増しということがわかった。設立当初から社長の右腕として支えてきた側近は、今では裁判所の向こう岸に座っている。何が真実かは別として、裏切りととるか、裸の王様をやっと指摘できるようになったのか、泥沼の人間会計を展開中だ。堀江氏は、完全に社会を舐めてしまっていたと思われる。
確かに経営上業務上において、問題か、問題でないかはっきりしないグレーゾーンはどの仕事にも存在するし、そのグレーゾーンが営業上うま味があるということはどの経営者も認識している。しかし、そのグレーゾーンは自分の物差しでグレーと決めたに過ぎず、他社が見ると黒と判定される場合もあり、そう判定された場合のダメージはかなり大きい事が予想される。耐震偽造事件にしても、ライブドア事件にしても、共通して言えることは、商売(カネ)のために悪いと分かっていながら、バレないことを前提に仕事をし続けていたということだ。原則自由社会における現代の企業経営は、商法上帰省の緩和を受けながら比較的自由度が増してきている。ということは経営者の倫理観がより強く問われる時代である。
新聞に騒がれる事件は氷山の一角であり、おそらく不祥事は今後も後を絶たないだろう。自ら厳しくコンプライアンス経営を実践でき、かつ利益の追求を計れるバランスが経営者の絶対条件だと痛感させられた一年であった。