掲載記事は シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。
28) 企業リスクマネジメント 第18話 ~もしも担当社員が倒れたら~
貴方は自分がいつ病気をして寝込んでもいいように、身の回りがわかるようになっていますか?現役で働き盛りの人は、抱えている仕事が沢山あり、また自分にしか分からない案件も多々あると思う。かくいう私も山積み書類のデスクに座り、1対1のメールや電話による処理が成される毎日を過ごす。公私共に誰も介在していない案件も多くある。「私が今、突然死んだら・・」と考えると、後が大変だろうなとぼんやり考えてしまう。後処理をする人のために常に整理整頓し、何がどこにありどうなっているのかわかるようにしていなければならないと思うと同時に、自分の意思を明確に残すためにも遺言書を書いておく必要があると常に考えている。
過日、ある会社で従業員が急病で長期にわたり休職することになった。彼は一人で沢山の仕事を抱え、人一倍遅くまで仕事をし、最後まで完遂することをモットーとする責任感の強い猛烈社員であった。その彼が突然出社できなくなり、業務が止まってしまった。現在抱えている仕事をリストアップしたところ、量の多さと内容の複雑さが起因したのか、納期遅れがあるものが存在していることもわかった。周囲で手分けして引き継ぎを行ったが、わからないことが多く、突然の交代に右往左往したことは想像に難くない。このことが原因で顧客に迷惑をかけてしまいクレームにつながってしまった。担当社員の突然の交代は致し方ないと理解しつつも、経緯の引き継ぎがなされていない、たらいまわしにされた、約束が違う、といったことがクレームの内容だったそうだ。かろうじて納期までに仕事を完了できたものの、上司が謝罪に行った時に、顧客から管理体制を指摘された。というのも上司が知らないことが多かったからである。ここで初めて管理者は管理体制が十分でなかったことに気付いたとのこと。私は、この話を自分のことのように聞き入ってしまった。なぜなら、いつ我が社に起こってもおかしくないと想像したからである。
私なりに分析した結果だが、ここで改善されなければならないことは、社員個々の情報の共有と管理、そしてバックアップを伴う業務管理体制の改善であろう。社員側の非として、この社員は顧客とのやりとりを他の誰とも共有していなかったので、他の社員では経緯がまったくわからなかった。メールによる通信がほとんどで、公に履歴が残っていなかった。全部単独で処理しようとし、納期遅れであっても上司に相談しなかった。自己のプロジェクト管理がなされず、また処理能力を超えた仕事を請けていた。もしも自分が倒れたら・・・といった想定及び危機管理がなかった、といったことが挙げられる。また、会社側の非は、社内がそういう状態であり、一部の社員に負荷がかかりすぎ、大事に至るまで気付かなかったということと、仮に起きても直ちにリカバリーできる体制をもっていなかった、担当が倒れたときのリスク管理がなされていなかった、といったところであろう。
日頃健康で、体力気力に自信がある人は、自分は無理が利くと過信してしまうケースが多く、自らのリスク管理が疎かになりがちである。真面目な社員こそ、ひとりで抱え込んでしまい、その結果、精神的に追い詰められダウンする。管理者は部下の能力と性質を十分に理解した上で、会社と個人の許容能力を勘定して仕事を与えなければ、優秀な人材が潰れてしまい、会社にも損害を与えることになる。それを回避するためには、管理者は常に社員の日常業務をモニターし、売上高ばかりに注力せず健全な労務環境を提供しなければならない。日々追われるのはどこも同じだが、一度手を休めて今のやり方が最善か否かを考えてみよう。
(06年9月27日掲載記事)
