23) 企業リスクマネジメント 第13話 〜PSEマークの今後〜
経済産業省がリサイクル業界に折れた。今月24日、安全性を示すPSEマークがない製品の販売期限である4月以降もリサイクル製品については、事実上容認する方針に転換すると表明した。この「事実上容認」という言葉の扱いには、筆者も気をつけて書かねばならない。経産省はPSEマークなしで、中古販売を認めるとは言っていない。リサイクル業者は中古品を「販売する」のではなく、「レンタル」とし、レンタル中、あるいは終了前に業者が消費者から製品をリコールし、検査をして、安全性を確認した上でPSEマークを付けて「販売」することとするから、レンタル中は目をつぶりましょうという意味での容認である。
しかし、事後検査するかどうかは業者と消費者の判断に委ねられ、経産省もレンタル後の経過を調べることはしないとなると、事実上安全確認なしでリサイクル品は販売することが可能になる。また、業者間の中古品売買についても、輸出目的か国内販売向けか判断できないためマークなしで認めることになった。
法律上、中古家電を「販売」する場合は、新品と同様にPSEマークが必要であるが、「レンタル」や「輸出目的」「無償譲渡」の場合は必要ないという法の抜け道を経産省と業界が作った結果の運用措置となった。
そもそも、電気用品取締法で国により電気製品の安全性を規制していたことに変わって、01年に電気用品安全法が施行され、高い安全性が要求される「ひし PSEマーク」以外、民間企業が自ら安全性を確認して届け出る方式となり、製造販売者の責任において安全適合性の確認とマークの貼り付けにより、消費者に製品の安全性を保証する目的で施行されたはずの法律であった。なのに、猶予期間満了目前の3月に反対運動に押し切られ、法律が事実上骨抜きになり、安全マークのない製品が出回っても良しとする、法律本来の趣旨である安全確保を見逃す措置をとる国と、それを評価する業界の安全感覚に唖然とする。
もちろん、5年前から周知徹底されていたはずが、所轄を通じて業者に周知し始めたのが今年2月になってからというのは、経産省側の手落ちであったと思う。
しかしながら、国も業者も安全な製品を流通させるという本質の目的を忘れなければ、「レンタル」という抜け道で逃げるのではなく、猶予期間を延長するとか、国が試験を順次無償で行うといった措置をとるなど、目的を最後まで全うする方法があったはずだ。
万が一でも、「レンタル」した商品に安全上欠陥があり、事故につながった場合の責任は誰が負うのだろうか。この場合「国」になるのであろうか。
検査機器を数千万円かけて導入したリサイクルショップ大手は、「もし事実上検査不要になったら準備が無駄になる」としても自主的にマーク取得に向け準備をしているという。また、後日検査のために回収するのは現実的にありえないと、マークなしで出回る製品が増えることを懸念している業者もある。製品に責任を持ち、まじめに取り組んでいる会社が馬鹿をみない政策にしてほしい。一方では、廃棄物のリデュース、リユース、リサイクルの3R政策を推進している経産省は、今回の施工により大量の廃棄物が出てしまうことを懸念したのかもしれない。しかし廃棄物の懸念よりも、人間への安全性が優先であろうし、駄々っ子になった業者も「レンタル」措置を単純に評価するのではなく、安全な製品を販売するという販売責任者としての自らの基本原則を忘れてはならない。結局、今回の問題は偉業のコンプライアンスがまだまだ低いのではないかということに疑問を呈したエンディングになった。日本には「安全」を唱え、PSEマークの他にもSマーク、新JISマークがある。ひとつの製品に3つ貼り付けすることもできる。わかりづらい日本の安全マーク制度が、今回の件を機に大きな意味で「安全」マークの整合性と意義の見直しにも貢献してくれることを願いたい。
(06年3月29日掲載記事)