掲載記事は シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。
2) EU加盟の東欧10カ国―CE適用でビジネスチャンス
6カ国で出発した欧州共同体(EC)は、1973年にイギリス、アイルランド、デンマーク、1981年にギリシャ、86年にスペイン、ポルトガルが加盟、1993年には欧州連合(EU)が発足、1995年にオーストリア、フィンランド、スウェーデンが加入して15カ国となり、そしてこの5月には東欧10カ国(ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキア、エストニア、ラトビア、リトアニア、スロベニア、マルタ、キプロス)が加わり25カ国の大所帯に拡大した。少し昔はソ連と呼ばれていた国々も今はヨーロッパだ。さてこの拡大EU、規制と基準認証制度の観点から何を意味するのか。新メンバー国に電気製品等を輸出し、販売するその製品にはCEマーキングが適用され、然るべきEC指令に適合しなければならなくなったということである。
数年前から、東欧の国々では、EU加盟国候補という性格上、総合認証協定締結交渉(PECA)をEUとの間で行ってきた経緯があり、ハンガリー等一部の国において、CEマーキングの適用が認められていた。このたびEU加盟を果たした10カ国の規制は、これまでのEU諸国向けの必須要求事項と整合し、原則欧州(EN)規格を技術基準とした自己適合宣言(DoC)方式へと統一され、外国メーカーにとっては適合性評価の諸手続きがわかりやすくなった。
しかし本当にCEマーキング制度に整合しているのか(それだけでいいのか)という点で不安が残る。各社技術法規専門担当は情報収集に必死だ。欧州筋によると、今月1日から新加盟国についてもCEマーキングが適用されていることは間違いない。但し、ポーランド、チェコ、ハンガリーでは一部の家電製品で衛生規制があったり、外装パッケージに原語による製品説明記載要求があるなど、その国の独自要求(National Requirement)が残っているケースがある。エストニア等6カ国についてそのような独自要求が残っているとは聞き及んではいないが、まったく規制がないというわけではないらしい。キプロスについてはギリシャ側地域のみがEUに加盟しており、流通エリアによって問われる規制が異なると考えられる。関東と関西で適用法が異なるというイメージか。当然ながら取扱説明書や表示関係はその国の原語で記載されなければならない。適用法令は各EC指令に基づく国内関係法令であり、政府強制認証方式から自己適合宣言方式へ移行、従って法律上の強制はCEマーク制度の遵守のみである。
しかし例えばポーランドのBマークが規制上市場要求されないかというと保証できない。恐らく諸国内においても規制変更が徹底されているとは思えず、通関時に当面ごたごたするだろうと容易に想像できる。東欧市場を狙う海外メーカーにとってはビジネスチャンス拡大が期待できるのでこのような規制変更は朗報であるに違いない。しかし、まだまだ独自要求がデビエーション(逸脱)として生きており未確認実態も多いので、暫くは充分な注意が必要だ。
この国々のマーケット規模はさておき、少なくとも敷居は低くなったのだから、市場性の検討をする価値は大いにある。また、リスクマネージしている会社なら、既に5月以前に対応済みで、ついでに新たな好機を掴んでいるのかもしれない。
こういった規制変更情報とその対応が生き残り戦略に影響するなら、管理者は担当者にうちはどうなのか尋ねてみてはどうだろう。
尚、巨大市場となった欧州の安全思想は、「災害は起こるはず」。災害を最小限にする努力をしていった結果、自己責任原則のもとに論理的に安全立証技術を確立した世界のお手本である。規模こそ大きくない東欧諸国がこの安全思想をクリアしたことは、大きく評価されるべきだし、工業立国ドイツと肩を並べて世界市場戦略に乗り出してくる日も遠くないと察する。
(04年5月26日掲載記事)
