掲載記事は シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。
17) 企業リスクマネジメント 第7話 〜賢い認証機関の選び方〜
製造者が供給製品の安全や性能を客観的に実証する手段として、法的強制・非強制に関わらず、公的基準への適合性評価(認証)を第三者認証機関に委ねるのが一般的なプラクティスである。そこでは製造者と認証サービスプロバイダーの間に需要と供給の関係が発生する。後者の一端を担う私が仕事をしていくなかで、常日頃遭遇すること、そして虚しく感じることは、この需要と供給の関係が歪められた関係になっているのではないか、ということである。製造者側は本来自らが果たすべき義務を忘れ、安全確保に対する他力本願な取り組みで、盲目的に認証機関のいいなりになっている会社が少なくない。そして一方では、認証機関のステータスをもって顧客に対面する機関側が説明義務を果たしていないばかりか、メーカーの無知につけこんで利益誘導を行い、売り上げをあげているという現状である。そういう事例に遭遇するたびに、日本の長年の風土が生み出した過度の許認可制度により、力を持たなくなった羊が、言葉巧みに誘われてオオカミに食べられていることを連想してしまう。もちろん、基準認証制度をしっかり勉強している製造者もあるが、認証制度の煩雑さ複雑さを差し引いて考えたとしても、本質を理解し認証機関と対等に喧々諤々できるメーカーはおそらく全体の10%程度であろう。ほとんどが試験認証機関に言われることを疑いもなく信じている実態が時々、既に取得している認証に疑問を抱き、相談されることにより浮かび上がる。
ある機器メーカーは、ある認証機関からISO品質システムを取得した上で、製品を欧州に輸出するためにCEマーキングをしているが、低リスクのクラシフィケーションにもかかわらず、全数型式試験を認証機関から要求されていた。当然ながら、毎回の型式試験料が長年に渡って支払われていた。そして、マークライセンスというその認証機関のハウスマークがつけられる権利金も製品の増加とともに増加していった。勿論メーカーがCEマーキング制度の基本を正確に理解した上で上述した方法を希望すれば決して間違いではない。しかし、その認証機関のISOシステム認証を取得し、そのベースで生産される低リスク機器は、基本的に自社による適合性評価で法律上十分であるという仕組みについては、メーカーは知らされていなかった。当方からアドバイスをもらったこのメーカーは、当該認証機関と交渉した。認証機関はこれを認めざるを得なかった。結果として、自社のリソースを活用し、安全ノウハウを蓄積しながら、数千万単位のコストを削減することができた。
また別の機械メーカーは、機械指令AnnexIVのカテゴリーに属する危険な機械を欧州に輸出するために、CEマーキングの支援をしてくれる会社を探し、見積価格が破格だったコンサル会社を支援会社として決定した。支援内容をみると、EMC評価以外にEN60204-1(機械の電気安全規格)の評価のみであった。この機械はAnnexIVのカテゴリーに属する危険な機械であり、Declaration of Conformity(自己適合宣言)で適合宣言きるものではなく、ノーティファイドボディといわれる機械指令の認証機関の関与を絶対必要とするものである。また特殊な産業で使われるため、機械指令、EMC指令以外の適合性評価も必要である。このメーカーは通常この種の機械を評価するためにかかる費用の3 分の1の見積額だけで決定した結果、本来の欧州市場への販売目的を果たしていない「安かろう悪かろう」商品を買ってしまった。
メーカーのニーズは、市場販売のための必要評価であるわけだから、サービスプロバイダーはニーズを満たすためのスキームや方法論を完全かつ正確に説明するべきである。中途半端な支援は、指令違反で会社責任を追求される問題に発展するかもしれない。経営者としてこの事実を知った上、リスク覚悟で「安物」を買ったのか、それとも知らぬはトップばかりなりなのかが気になる。2,3百万ケチったばかりに、市場で指令違反を検挙された場合の社会的損失、金銭的ダメージを考えると、とても会社のためとは思えない。
メーカーが専門的な複雑な認証制度を知らないために市場で問題を起こした例は多い。だから、専門機関である数ある認証機関やサービスプロバイダーは何よりもまず正確な情報提供もサービスの本質と認識して、各種サービスの信頼性向上を計ってほしい。
例えば、本質の説明がなされているか、メーカーに適合性評価方法を選択させているか、その説明に妥当性があるか、この壷を買えば幸せになりますよ(この認証があれば販売できますよ)といった誤解を生む説明をしていないか等といった基準をもち、認証機関を選ぶ目を養ってほしい。良い弁護士を選ばないと費用はかさむ一方で敗訴してしまうのと同じである。同時にメーカーには、賢い認証機関の選び方が求められている。
(05年9月28日掲載記事)
