掲載記事はナノテックシュピンドラー社長 シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。

グローバル時代の生き残り戦略

1) 安全確保へのトップ意識改革

「グローバル時代の生き残り戦略」という題名で国 際認証、国際規格についての連載がはじまった。この題名はあらゆるシーンで様々なスピーカーによって語られているので、特段真新しい印象はない。ただし、 経営戦略的観点から、安全なモノづくりの根幹である技術基準についてこれまで語られたことがないように思う。というのも安全設計・製造に関わる基準認証や 適用規格というツールは影の存在でセールスツールではないため、経営者自身がその内容をよく理解しておらず、経営戦略の話題になりにくいという背景があ る。また担当者もそれらの重要性、必要性、経済的効果を上手く経営陣に伝えられないことが多いために、その適合性確保への取り組みがトップダウンで行われ ていないからである。

経営者には表の顔と裏の顔があるといっていい。表は経営理念「安全安心な製品をユーザーへ」をモットーとする社会的責任者の顔、裏は「部材の仕入れがな んぼで・・うーん採算があわんな」という利益を追求する商売人の顔。どちらも正しい顔なのである。

電気製品や電子部品等の認証取得を法的強制とする製品群や国々は沢山あるが、本来認証とは、第三者機関が客観的に製品やその国の技術基準への適合性を確 認し、証明する行為である。自社製品が不安全なために人に怪我をさせることが絶対あってはならず、認証はその為の技術基準適合や品質システム維持の努力通 じて経営者の社会的責任を果たすツールと言える。法的に要求されるから、或いはユーザーが要求するから取得するものではなく、世のため自社のため、会社と してのリスクを限りなくゼロにするための安全確保の一プロセスにほかならない。よって認証取得は製造者自らの責任において実施する安全立証で十分な国も多 い。企業がもっと勉強すれば認証の負荷を減らすことができ、経済的効果も大きい。ただ、方法を知らないだけである。

仕事柄、欧州など海外向け機械の検査をするたびに、不思議に思うことがある。使用されている安全部品の安全性確認がとれないのである。IEC(国際電気 標準規格)やEN(欧州規格)等の技術基準を満たしている根拠がない。安全部品は機械の安全性を支える最も重要な部品ゆえ、部品個別に認証を取得している のが一般的であるが、その証拠がなくまた自己確認すらしていない。その部品の大手製造メーカーに確認すると、メーカー曰く「その型番は国内用で、別の型番 でIEC規格に適合しており認証をとったものがあります。」

それでその型番に調達変更をかけたところ、単価が3割位高い。機械メーカーは“安全”費用をコストに見積もっていなかった。とんだ誤算である。インター ネットで仕様にあうものを選んだのだが、安全の妥当性は検討しなかったわけである。

こういった機械メーカーは珍しくないが、こんな状況であるとは経営者は知らないことが多い。経営者は購買選定チェック項目に抜けがあることを知っている のだろうか。購買部や設計者が悪いのではなく、彼らを監督すべき管理者が知らないことが問題だと思う。ただ不思議なのは、部品メーカーの対応である。な ぜ、日本人オペレータ用と外国人オペレータ用で差をつけるのか。国による個別要求はあるものの、強制だろうがなかろうが、人の命には変わりないはずだ。ま た、安全製品を調達するために3割高のオプションを買わなければならないとの狭量な商売人的感覚でボーダーレス競争に臨めるのだろうか。国際規格で設計さ れた商品で海外にも国内にも安全を売ってほしいと願う。グローバル時代に必要なのは、こうした側面におけるトップの意識改革とグローバルに通用するリスク 管理であり、認証取得の有無に関わらず安全確保の裏づけを持つこともひとつの経営戦略となり得るのである。

(04年4月21日掲載記事)